2026年の賃貸市場で起きている二極化

この記事では、値上げが続く2026年の賃貸市場のなかで、条件の相談が通りやすい物件をどう見分けるか、そして築古や駅から遠い部屋を選ぶときに何を妥協してはいけないかを整理します。

読み終えると、次の部屋探しでどの条件から動かせばいいかの順番が分かります。

2026年の賃貸市場では、家賃が上がり続けている物件と、募集をかけても空室の期間が長引いている物件の差が広がっているという見方が出ています。

東京23区では前年比で3〜5%程度の上昇が紹介されている一方で、郊外や築年数の経った物件では、募集賃料を据え置いても入居者が決まりにくいケースがあると指摘されています。

借りる側から見ると、これは大事な意味を持ちます。

値上げをそのまま受け入れるしかない物件と、条件について相談する余地が残っている物件が、同じ市場のなかに同時に存在しているということだからです。

同じ沿線、同じ駅の徒歩圏内でも、築浅で駅に近い部屋には申し込みが重なり、築年数が経っていて駅から離れた部屋には空きが残る。

この分かれ方が、そのまま交渉の余地の地図になります。

「家賃が上がっているから、どこを探しても厳しい」と感じているなら、探している側が上がっている方のグループばかりを見ている可能性があります。

市場が二つに割れているなら、割れているもう一方を最初から候補に入れて比べたほうが、選択肢は広がります。

条件の相談が通りやすい物件に出る3つのサイン

物件情報を見るとき、家賃と間取りだけを見ていると、この差は分かりません。

次の3つは、貸主側が条件を調整してでも決めたいと考えている可能性を示すサインとして知られています。

1. 募集開始から時間が経っている

同じ物件が何週間も掲載され続けている場合、空室の期間がそのまま貸主の負担になっています。

何月何日から募集が出ているかは物件情報に書かれていないことも多いので、気になる部屋があれば不動産会社に直接聞いてみてください。

2. 同じ建物で複数の部屋が同時に募集されている

一棟のなかで空きが重なっているときは、建物全体の入居率が下がっている状態です。

1部屋だけの空きより、条件を動かす判断が出やすい傾向があるといわれています。

3. 初期費用の条件がすでに緩められている

礼金なし、仲介手数料の割引、一定期間の家賃が無料になる条件などが最初から付いている物件は、貸主側がすでに「早く決めたい」という姿勢を出しているサインです。

すでに緩めてある物件のほうが、残りの条件についても話を聞いてもらえる余地が残っている場合があります。

ただし、これらのサインが出ているからといって必ず条件が通るわけではありません。

建物の事情や貸主の方針によって結論は変わります。

あくまで「聞いてみる価値がある物件」を絞り込むための目印として使ってください。

築古・駅遠で妥協していい条件と、してはいけない条件

安い物件には安い理由があります。

大事なのは、その理由が生活費に跳ね返るものかどうかを分けることです。

妥協しても暮らしにあまり響かないのは、建物の見た目、共用部の新しさ、設備のデザイン、部屋の向きといった、好みに近い部分です。

一方で、次の項目は妥協すると毎月の支出や時間に直接返ってきます。

  • 窓と断熱の状態。古いサッシや単板ガラスの部屋は、冷暖房が効きにくく光熱費が増えやすい傾向があります
  • 洗濯機置き場が室内にあるか。屋外置きは、洗濯機の傷みが早くなるという指摘があります
  • 通勤にかかる実際の時間。徒歩分数だけでなく、乗り換えの待ち時間を含めた実測で見ます
  • 更新料や保証料など、毎回まとまって出ていく費用。家賃が安くてもここが重ければ総額は縮みません

ここで一度、数字にしてみます。

家賃が月5,000円安い部屋を見つけたとします。

年間では60,000円の差です。

ところが断熱が弱く、冷暖房で光熱費が月3,000円増えたとすると、実際の差は月2,000円、年間24,000円まで縮みます。

さらに駅から遠くなってバス代が月4,000円かかるようなら、差は逆転します。

家賃の数字だけを並べて比べるのではなく、家賃の差額から増えそうな光熱費と交通費を引いた金額で比べる。

この一手間を入れるだけで、安く見えた物件が本当に安いのかが分かります。

自分の場合にどこを見直せる余地があるかは、1分でできる住み替え診断でも整理できます。

同じ家賃で条件を上げるための、ずらす順番

条件を一度にまとめて動かすと、何が効いたのか分からなくなります。

次の順番で1つずつずらして、そのたびに出てくる物件を比べるのがおすすめです。

第1段階、駅からの徒歩分数を延ばす。 徒歩5分から徒歩12分に広げるだけで、候補の数はかなり変わります。同じ家賃のまま広さや設備が上がることも多い部分です。

第2段階、築年数のこだわりを緩める。 築10年以内から築20年以内に広げます。ただし前の章のとおり、窓と断熱の状態は必ず内見で確認してください。

第3段階、沿線とエリアを広げる。 隣の駅、別の路線、少し離れた自治体まで範囲を広げます。同じ通勤時間でも、路線が変わると家賃の水準が変わることがあります。

第4段階、階数や向きを調整する。 1階、北向き、角部屋ではない部屋など、好みに近い条件を最後に動かします。

順番が大事なのは、生活への影響が小さいものから動かすためです。

いきなり第3段階から手を付けると、通勤が長くなったのに家賃はあまり変わらなかった、ということが起こります。

秋から冬にかけて動きやすくなる理由

9月は秋の人事異動にともなう転居が集まり、引っ越し業界では動きが増える時期といわれています。

その波が落ち着いた後の秋から冬にかけては、引っ越し料金が下がりやすい時期として紹介されることが多い期間です。

部屋探しの側から見ると、この時期は次の点で動きやすくなります。

まず、繁忙期のように内見の予約が取りにくい状況になりにくいこと。

次に、募集が長引いた部屋がそのまま残っているため、前の章で挙げたサインが出ている物件を見つけやすいこと。

そして、引っ越し業者の日程が取りやすいことです。

ただし、これは全国どこでも同じように起きるわけではありません。

学生の多い街や再開発が進んでいるエリアでは、季節の動きが当てはまらない場合があります。

狙っているエリアの状況は、地元の不動産会社に直接聞いてみるのが早道です。

相談する前に手元に用意する3つの数字

条件の相談は、感覚で「もう少し安くなりませんか」と伝えるより、数字を持って行ったほうが話が具体的になります。

次の3つを先に出しておいてください。

1つ目、今の家賃と、更新時にかかる総額。 家賃だけでなく、更新料、保証会社の更新保証料、火災保険料をすべて足します。この総額が、住み替えと比べるときの土台になります。

2つ目、住み替えにかかる初期費用の見込み。 敷金、礼金、仲介手数料、前家賃、鍵交換費用、保証料、引っ越し業者への支払いを合わせると、家賃の4〜5か月分程度になるのが一般的といわれています。この金額を、毎月の家賃差額で何か月かけて取り戻すのかを計算します。

3つ目、何年住むつもりか。 初期費用は住む期間が長いほど1か月あたりの負担が薄まります。たとえば初期費用が40万円かかったとして、2年で出るなら1か月あたり約16,700円の上乗せですが、5年住むなら約6,700円まで下がります。同じ40万円でも、住む年数によって毎月の重さは2倍以上違ってきます。家賃が月3,000円安い部屋に住み替えたとしても、2年で出る前提なら初期費用の重さのほうが上回る計算になります。

この3つが揃っていれば、提示された条件が自分にとって見合うかどうかを、その場で判断できます。

逆に数字がないまま話を進めると、目の前の家賃の安さだけで決めてしまいがちです。

なお、契約条件や費用の扱いは物件ごとに異なります。

更新料の定めがあるか、原状回復の特約がどうなっているかといった点は、必ず賃貸借契約書の該当箇所を確認し、分からないところは管理会社に問い合わせてください。

契約や法律の判断が絡む場面では、専門家に相談したうえで進めることをおすすめします。