物件価格だけ見て計画を立てると足りなくなります
賃貸から購入を考えはじめた人が、最初につまずくところがあります。物件価格のほかに、まとまった現金が必要になるという点です。
賃貸に住んでいると、引っ越しにかかるお金の感覚は家賃を基準に作られています。
家賃の4か月分から5か月分くらい用意しておけば動ける、という肌感覚です。
購入はその感覚が通用しません。基準が家賃ではなく物件価格に変わるからです。
同じ引っ越しでも、必要な現金の桁が変わります。
この記事では、購入の諸費用に何が含まれるのかを項目ごとに整理して、賃貸の初期費用と何が違うのかを比べます。
金額そのものは物件によって大きく変わるので、ここではどういう構造でお金がかかるのかを押さえることを目的にします。
構造さえ分かれば、実際の見積もりを見たときに、それが妥当かどうかを自分で判断できるようになります。
賃貸の初期費用はこうなっている
比べる前に、いま慣れているほうから確認します。
賃貸で部屋を借りるときにかかるのは、だいたい次の項目です。
- 敷金
- 礼金
- 仲介手数料
- 前家賃と日割り家賃
- 火災保険料
- 保証会社の利用料
- 鍵の交換費用
これらを合計すると、家賃の4か月分から6か月分あたりになるのが一般的な目安です。
家賃10万円なら40万円から60万円ほど、という感覚ですね。
ここで注目したいのは、すべての項目が家賃を基準に決まっていることです。
敷金は家賃の何か月分、仲介手数料も家賃の何か月分、という具合です。
だから家賃が分かれば初期費用のおおよそが読めます。
購入では、この前提が変わります。
購入の諸費用は何にかかるのか
家を買うときにかかる諸費用を、性質ごとに4つに分けて見ていきます。
1. 税金
不動産の取得や契約には税金がかかります。
売買契約書に貼る印紙税、登記のときの登録免許税、購入後に納める不動産取得税などです。
物件の種類や広さ、築年数によって軽減される制度がある場合もありますが、条件が細かく決まっているため、適用できるかどうかは不動産会社や税務の専門家に確認してください。
2. 登記の費用
購入した不動産を自分の名義にする手続きにかかる費用です。
司法書士に依頼するのが一般的で、報酬と実費がかかります。
3. ローンに関する費用
住宅ローンを組む場合、金融機関に支払う事務手数料や保証料、ローン契約書の印紙税などがかかります。この部分は金融機関によって体系がかなり違います。
手数料が定額のところもあれば、借入額に対する割合で決まるところもあります。
4. 仲介手数料と保険料
仲介会社を通して購入する場合は仲介手数料がかかります。
こちらは物件価格に連動します。
あわせて火災保険料と地震保険料も必要です。
賃貸のときより補償の対象が広くなるぶん、金額も大きくなる傾向があります。
これらを合計したものが諸費用です。多くの項目が物件価格に連動しているため、価格が上がれば諸費用も一緒に上がります。
ここが賃貸との決定的な違いです。
賃貸と購入、お金の出方はどう違うか
2つを並べると、違いは3つに整理できます。
違い1: 基準が家賃から物件価格に変わる
賃貸は家賃、購入は物件価格。
ここが変わるだけで必要な現金の桁が変わります。
家賃を基準にした感覚のまま購入の計画を立てると、資金が足りなくなります。
違い2: 戻ってくるお金がほぼない
賃貸の初期費用には敷金が含まれていて、これは退去時に精算されて一部が戻ってくる可能性があります。
一方、購入の諸費用は原則として戻ってきません。
税金も手数料も登記費用も、支払ったら終わりです。
違い3: 入居後の負担が続く
賃貸では家賃さえ払えば、税金も修繕費もオーナー側の負担です。
購入すると、固定資産税は自分に来ますし、マンションなら管理費と修繕積立金が毎月かかります。
戸建てなら将来の修繕に自分で備える必要があります。
この3つ目が一番見落とされます。諸費用の話ばかり調べて、入居後の毎月の負担を計算に入れていないケースがよくあります。
賃貸を続けるか購入に動くかで迷っている方は、1分でできる住み替えたら得する度診断で今の状況を整理してみてください。
用意しておく現金をどう考えるか
では、実際にいくら準備すればいいのか。
ここは物件によって変わるので断定できませんが、考え方をお伝えします。
まず、頭金と諸費用は別物として考えてください。
頭金は物件価格の一部を先に払うお金で、借入額を減らすためのものです。
諸費用は物件価格とは別にかかるお金です。
この2つを混同していると、頭金を全部使い切ってしまって諸費用が払えない、という事態になります。
次に、引っ越し代と家具家電の費用も忘れないでください。
購入の話をしていると諸費用の項目に気を取られますが、実際には引っ越し業者への支払いも、新居に合わせたカーテンや照明の購入も発生します。
賃貸の住み替えでも同じですが、購入では部屋が広くなるケースが多いぶん、こちらも大きくなりがちです。
最後に、手元に生活の予備費を残してください。
用意した現金を全部使い切ると、入居後に何かあったときに動けなくなります。
購入した直後は固定資産税の納付や、住宅ローン控除の手続きなど、慣れない出費と手続きが続く時期でもあります。
どのくらい残すかに決まった正解はありませんが、生活費の数か月分は手をつけずに置いておくという考え方が広く使われています。
家を買った直後に病気やけがで働けなくなったり、家電が壊れたりする可能性は、買う前と変わらず存在します。
むしろ引っ越しで家電を酷使したぶん、故障が重なる時期でもあります。
ここを削ってでも良い物件を、という判断は避けたほうが無難です。物件は他にもありますが、生活の余白は他から持ってこられません。
見積もりを受け取ったときの見方
不動産会社から諸費用の見積もりをもらったら、次の点を確認してみてください。
- 項目ごとに金額が分かれて書かれているか
- 概算と確定の区別がついているか
- 火災保険の補償内容と期間はどうなっているか
- ローンの手数料は他の金融機関と比べたか
一式いくら、という形でまとめられている見積もりは、内訳を聞いてかまいません。大きな買い物ですから、何にいくら払うのかを確認するのは当然のことです。
また、住宅ローン控除のような制度は入居する年によって条件が変わることがあります。
適用できるかどうかで手元に残るお金が変わるため、制度の内容は国税庁の情報を確認するか、税務の専門家に相談してください。
当サイトでは一般的な考え方をお伝えしていますが、個別の判断は専門家の領域になります。
まとめ
購入の諸費用は、賃貸の初期費用の延長線上にはありません。基準が変わり、桁が変わり、戻ってこないという3つの違いがあります。
- 賃貸の初期費用は家賃基準、購入の諸費用は物件価格基準
- 税金・登記・ローン関連・仲介手数料・保険料が主な項目
- 敷金と違い、諸費用は原則戻ってきません
- 入居後の固定資産税や修繕積立金は諸費用とは別に見ておきましょう
- 頭金と諸費用は別物。予備費も残しておきましょう
購入はまだ先の話、という方も、構造だけ知っておくと更新のたびの判断が変わります。
いくら必要なのかが分からないと、選択肢として検討することすらできないからです。
具体的な金額は物件と条件次第です。
気になる物件が出てきたら、その物件での見積もりを取ってみてください。