名前は知っているのに、仕組みは説明できない制度
家の購入を考えはじめると、必ず出てくる言葉があります。
住宅ローン控除です。
ただ、この制度を正確に説明できる人は多くありません。
ローンの利息が戻ってくると思っている方もいますし、家を買うと補助金がもらえる制度だと理解している方もいます。どちらも正確ではありません。
賃貸を続けるか購入に動くかを比べるとき、この制度を誤解していると計算が大きくずれます。
購入側を実際より有利に見積もってしまったり、逆に効果を見落として過小に見積もってしまったりするからです。
この記事では、住宅ローン控除がどういう理屈でお金の負担を軽くするのかを整理します。
そのうえで、賃貸との比較にどう組み込めばいいかまで説明します。
金額そのものは入居する年や住宅の性能によって変わり、制度も改正が重ねられています。
ですので、ここでは変わりにくい仕組みの部分に絞ってお伝えします。
戻ってくるのは利息ではなく、納めた税金です
まず一番大事なところから。
住宅ローン控除は、年末時点のローン残高をもとに計算した金額を、納めるべき所得税などから差し引く制度です。
正式名称は住宅借入金等特別控除といいます。
ポイントは2つあります。
ポイント1: 基準になるのはローン残高です
その年に払った利息の額ではありません。12月31日時点でいくら借金が残っているかが基準になります。
だから返済が進んで残高が減っていくと、控除される金額も年々小さくなっていきます。
ポイント2: 減るのは税金です
現金が支給されるわけではなく、納めるはずだった税金が減ります。
会社員の方であれば、給与から天引きされていた所得税が精算されて戻ってくる形になるため、結果として還付金として振り込まれることがあります。
この見え方から、お金がもらえる制度だと受け取られやすいのだと思います。
ここから導かれる大事な性質があります。もともと納めている税金が少ない方は、控除の枠を使い切れない場合があるということです。
制度の上限まで控除できると計算していたのに、実際にはそこまで税金を納めていなかった、というケースが起こり得ます。
年収や家族構成によってここは変わるため、自分の場合どうなるかは税務の専門家に確認するのが確実です。
この性質は、ネットの解説記事を読むときに特に効いてきます。紹介されている控除額は、その枠を使い切れる人を前提にした最大値であることが多いからです。
共働きで持分を分けている場合や、扶養控除などで納税額がもともと抑えられている場合には、同じ物件でも実際に軽くなる金額は変わってきます。
つまり、記事に書かれた金額をそのまま自分の計算に持ち込むと、購入側を実際より有利に見積もることになります。制度の上限ではなく、自分が納めている税額のほうが天井になるという点だけは覚えておいてください。
期間と限度額は、入居する年で変わります
住宅ローン控除には、控除を受けられる期間と、計算のもとになるローン残高の上限が決められています。
この2つが、制度改正のたびに見直されている部分です。
近年の傾向として、省エネ性能の高い住宅を優遇する方向で条件が整理されてきています。
住宅の性能によって上限が変わる仕組みになっているため、同じ価格の物件でも、性能が違えば控除の額が変わります。
中古住宅についても条件が見直されており、扱いが変わってきています。
ただし、具体的な数字をこの記事に書くことはしません。
理由は2つあります。
ひとつは、制度が改正されるため、記事を読むタイミングによって正確でなくなる可能性があるからです。
もうひとつは、適用の可否が住宅の種類、床面積、築年数、所得など複数の条件で決まるため、一般的な数字を当てはめると誤解を生むからです。
確認先ははっきりしています。国税庁のウェブサイトです。
入居を予定している年を基準に条件を確認して、自分の検討している物件が当てはまるかどうかを、不動産会社や税務の専門家に確認してください。
ネットの解説記事は、書かれた時点の制度に基づいています。
賃貸との比較にどう組み込むか
ここが実務的に一番役に立つところです。
賃貸を続けるか購入するかを比べるとき、控除の効果を計算に入れる方法をお伝えします。期間を2つに分けてください。
前半: 控除がある期間
この期間は、購入側の実質的な負担が軽くなります。
ローン返済額や管理費、税金といった支出から、控除によって減った税額を差し引いた金額が、その期間の実質負担です。
後半: 控除が終わったあとの期間
控除の期間が終わっても、家に住み続けることに変わりはありません。
この期間は支出だけがかかります。
しかも建物は古くなっていくので、修繕費が増えていく時期と重なりやすくなります。
この2つを平均してしまうと、判断を誤ります。
前半だけを見ると購入がとても有利に見えますし、後半だけを見ると負担が重く見えます。
実際にはその両方を経験するので、分けて出したうえで合計する必要があります。
前回お伝えした損益分岐点の計算に組み込むなら、控除で減った税額を購入側の負担から引いて、月あたりの差額を出し直す形になります。
控除がある期間は差額が広がるので、損益分岐点は前倒しになります。
住み替えと購入のどちらに動くか整理したい方は、1分でできる住み替えたら得する度診断で今の状況を確認してみてください。
手続きで押さえておくこと
制度を使うには手続きが必要です。
ここも簡単に触れておきます。
最初の年は確定申告が必要です。
会社員の方であっても、控除を受ける最初の年は自分で確定申告をする必要があります。
ここを知らずに申告しそびれると、その年の控除を受けられないことになりかねません。
2年目以降は年末調整で対応できる場合があります。
会社員の方は、必要な書類がそろえば勤務先の年末調整で処理できるのが一般的です。
必要な書類は前もって確認してください。
住宅の性能を証明する書類など、購入時や引き渡し時に受け取っておかないと後から取得が難しいものもあります。購入の段階で不動産会社に、控除の申請に必要な書類は何かを聞いておくと安心です。
これは購入前に確認しておく価値があります。
手続きの詳細や必要書類は国税庁の案内に沿って進めるか、税理士などの専門家に相談してください。
まとめ
住宅ローン控除は、購入を検討するうえで無視できない要素ですが、正確に理解していないと計算がずれます。
- 戻るのは利息ではなく、納めた税金が減るという形です
- 基準は年末のローン残高。返済が進むと控除額も減っていきます
- 納めている税額が少ないと、枠を使い切れない場合があります
- 期間と限度額は入居する年と住宅の性能で変わります
- 賃貸と比べるときは、控除がある期間とその後を分けて計算しましょう
- 数字の確認は国税庁で。適用の可否は専門家に相談してください
制度は改正されます。
だからこそ、変わらない仕組みの部分を理解しておくことに意味があります。
仕組みが分かっていれば、条件が変わったときに自分の計算をどう直せばいいかが分かるからです。
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