更新の通知が来るたびに、同じことを考えていませんか

更新の案内が届いて、また家賃が上がると書いてある。

ここでふと、このまま払い続けるのと買ってしまうのと、どちらが正しいのだろうと考える。

そして答えが出ないまま更新料を払って、2年後にまた同じことを考える。

この繰り返しから抜け出せない理由ははっきりしています。比べ方が決まっていないからです。

賃貸と持ち家の比較は、ネットで調べると意見が真っ二つに割れています。

持ち家は資産になると言う人がいて、賃貸は身軽でいいと言う人がいる。

どちらも正しいことを言っているのに、読んだあとに自分がどうすべきかは分からないままです。

この記事でやりたいのは、その論争に加わることではありません。あなたの数字を当てはめれば答えが出る形を用意することです。

損益分岐点という考え方を使うと、どちらが得かは意見ではなく計算で決まります。

読み終わるころには、次の更新通知が来たときに迷わなくなっているはずです。

家賃とローン返済額を並べても答えは出ない

まず、多くの人がやってしまう比べ方から確認します。

いま家賃が12万円だとします。

物件を調べていたら、毎月の返済額が11万円のマンションが出てきた。

家賃より1万円安いのだから買ったほうが得だ、と考える。

これが一番よくある落とし穴です。持ち家には、毎月の返済額に入っていない費用がいくつもあるからです。

代表的なものを挙げます。

  • 固定資産税と都市計画税
  • 火災保険料と地震保険料
  • マンションの場合は管理費と修繕積立金
  • 戸建ての場合は将来の修繕費の積み立て

このうち管理費と修繕積立金は毎月かかります。

固定資産税は年に数回に分けて払います。

修繕費は数年から十数年に一度、まとまった金額で出ていきます。

つまり、返済額11万円の物件に実際に住むと、月あたりの負担はもっと大きくなるわけです。

この上乗せ分を計算に入れないまま比較すると、持ち家が実際より安く見えてしまいます。

逆に、賃貸側にも見落としがあります。更新料です。

2年ごとに家賃1か月分を払う契約なら、月あたりに直すと家賃の24分の1が上乗せされている計算になります。

家賃12万円なら、月5,000円ほどが見えないところでかかっていることになります。

正しく比べるには、両方に隠れた費用を足したうえで並べる必要があります。

損益分岐点の出し方

ここからが本題です。

やることは3ステップだけです。

ステップ1: 購入時にかかる初期費用を出す

物件を買うときには、物件価格とは別に諸費用がかかります。

登記の費用、ローンの手数料、仲介手数料、税金などです。

物件や条件で幅がありますが、まとまった金額が最初に出ていくという点を押さえておけば十分です。

賃貸から賃貸への住み替えでも初期費用はかかりますが、購入の場合は桁が変わります。

この最初の出費が、購入側の重りになります。

ステップ2: 月あたりの負担の差を出す

賃貸を続けた場合の月の負担と、購入した場合の月の負担を、それぞれ隠れた費用まで足して出します。

```
賃貸側 = 家賃 + 更新料を月割りしたもの + 火災保険料を月割りしたもの
持ち家側 = ローン返済額 + 管理費 + 修繕積立金 + 税金を月割りしたもの + 保険料を月割りしたもの
```

この2つを引き算して、月にいくら差があるかを出します。

ステップ3: 初期費用を月の差額で割る

```
損益分岐点(か月) = 購入の初期費用 ÷ 月あたりの差額
```

たとえば初期費用が240万円で、購入したほうが月2万円安く済むとしましょう。

240万円 ÷ 2万円 = 120か月、つまり10年住めば元が取れるという計算になります。

10年より長く住むなら購入が有利、それより短いうちに引っ越すなら賃貸のほうが安く済んだ、ということです。

数字が出てしまえば、あとは自分が何年そこに住むつもりかを考えるだけです。どちらが得かという問いは、何年住むかという問いに置き換わります。

年数で答えがひっくり返る理由

なぜ住む年数で結論が変わるのか、構造を押さえておくと応用が利きます。

購入は、最初に大きな出費をして、そのあと毎月少しずつ得をしていく形です。

マラソンでいえば、スタートで大きく出遅れてから、少しずつ差を詰めていくランナーです。

賃貸は、最初の出費が小さいかわりに、毎月ずっと払い続ける形です。

スタートで先行しているランナーです。

この2人がいつ並ぶか。それが損益分岐点です。

だから、途中でレースをやめてしまえば賃貸が勝ったままですし、最後まで走れば購入が追い抜きます。

転勤の可能性がある方や、家族構成が変わりそうな方に賃貸がすすめられるのは、レースを途中でやめる可能性が高いからです。

ここで大事なのは、どちらが優れているかではないということです。

走る距離が違えば有利な走り方も違う、それだけの話です。

住み替えを含めて自分の状況を整理したい方は、1分でできる住み替えたら得する度診断で今の条件を確認してみてください。

家賃が上がり続けている今、何が変わったか

もうひとつ、いまの状況に固有の話をしておきます。

首都圏の賃料はここ数年上昇が続いており、東京23区では複数の調査で前年を上回る水準が報告されています。

特にファミリー向けの間取りで上昇が目立つという指摘もあります。

背景として、分譲マンション価格の高騰で購入をあきらめた層が賃貸市場にとどまり、需要が厚くなっているという見方が紹介されています。

これが損益分岐点に与える影響は、賃貸側の負担が年々増えていくという点です。

さきほどの計算では、家賃が今のままだと仮定して差額を出しました。

でも実際には、更新のたびに家賃が上がるなら、賃貸側の負担は年を追うごとに大きくなります。

すると月の差額も広がり、損益分岐点は前倒しになります

10年で元が取れる計算だったものが、家賃上昇を織り込むと8年になる、といった形です。

ただし、これは購入をすすめる話ではありません。

物件価格も同時に上がっているので、購入側の初期費用と借入額も大きくなっています。両方が動いているので、片方だけ見て判断しないでくださいというのが正確な言い方になります。

だからこそ、他人の結論ではなく自分の数字で出す意味があります。

数字が出たあとにやること

計算して方向性が見えたら、次は情報の精度を上げる段階です。

賃貸で残ると決めた場合

更新の条件を契約書で確認してください。

値上げの通知が来ている場合、金額の根拠や周辺相場について管理会社に相談する余地があるケースもあります。

ただし対応は契約内容や地域によって異なり、必ず希望が通るとは限りません。

購入を検討すると決めた場合

ここからは自分だけで抱え込まないことをおすすめします。

物件ごとに管理費も修繕積立金も税額も違いますし、ローンの条件は年収や勤務形態で変わります。ネットの平均値では、あなたの数字は出ません。

住宅ローン控除のような税制も、入居する年によって条件が変わります。

制度の内容は改正されることがあるため、適用の可否や金額は国税庁の情報を確認するか、税務や不動産の専門家に相談してください。

当サイトでは特定の物件をおすすめすることはしていませんが、条件を整理したうえで相談先を紹介することはできます。

まとめ

賃貸と持ち家のどちらが得かという問いには、万人共通の答えはありません。

でも、あなた個人にとっての答えは計算で出せます。

  • 家賃とローン返済額を並べるだけでは足りません。両方に隠れた費用があります
  • 損益分岐点は、購入の初期費用を月の差額で割ると出ます
  • 何年住むかが分かれば、どちらが得かも決まります
  • 家賃が上がる局面では、損益分岐点は前倒しになります
  • 物件ごとに条件が違うので、方向性が見えたら専門家に確認しましょう

次に更新の通知が届いたとき、また同じ迷いを繰り返さないために、今のうちに一度だけ数字を出しておいてください。一度出しておけば、次からは更新するかどうかを数分で決められます。

その数分の差が、2年ごとに積み上がっていきます。