9月の引っ越しが混むのは、秋の異動シーズンと重なるから

引っ越しが高くなる時期といえば、多くの人は3月から4月を思い浮かべます。

ところが実際には、もうひとつ料金が上がりやすい時期があります。

それが9月です。

この記事では、9月の引っ越しが第二の繁忙期と呼ばれる理由、通常期との費用差を数字でどう見るか、9月の中でも比較的動かしやすい日の選び方、そして8月のうちに始めておきたい見積もりの手順を整理します。

読み終えたときに、自分の引っ越しをいつ・どんな順番で進めればいいかが決まっている状態を目指します。

9月が混む理由ははっきりしています。

多くの企業が下半期に向けた人事異動を9月に発表するため、転勤にともなう引っ越しが一気に増えるからです。

個人が自分の都合で選ぶ引っ越しと違い、転勤の引っ越しは日程を動かしにくいという特徴があります。

会社が決めた着任日に合わせるしかないので、その前後の週末や月末に予約が集中します。

つまり9月は、日程を動かせない人たちが先にトラックの枠を押さえていく月ということです。

ここが理解できると、対策の方向も自然に決まります。

日程を動かせる側が、混み合う枠をあえて外していけばいいわけです。

春の繁忙期ほど極端ではないため、9月の値上がりは意外と知られていません。

学生の入学や新社会人の入社が重ならない分、街全体の引っ越しの気配も薄く見えます。

それでも業者側の予約表は確実に埋まっていきます。

知らずに月末の土曜日を第一希望で出すと、料金も選択肢も不利な条件から交渉を始めることになります。

通常期と繁忙期で費用は約1.5倍。差額を自分の金額で計算する

具体的な金額の感覚をつかんでおきましょう。

引っ越し料金の相場を集計しているサイトでは、通常期でおよそ3万2,000円から4万8,000円、繁忙期でおよそ4万4,000円から6万7,000円という幅が紹介されています。

おおまかに1.5倍前後の開きがあるということです。

この倍率を自分の見積もりに当てはめると、判断がしやすくなります。

たとえば通常期なら4万円で済む内容が、繁忙期価格で6万円になるとします。

差額は2万円です。

荷物が多く通常期に6万円かかる内容なら、1.5倍で9万円、差額は3万円になります。

ここで大事なのは、この差額を「引っ越しのために我慢する金額」として見ないことです。

差額の2万円は、新居のカーテンやエアコンの取り付け、あるいは数か月分の通信費に回せる金額です。

日程をずらすという一度の判断で変わる可能性のある部分なので、毎日の節約より手間あたりの見返りが大きい部類に入ります。

ただし相場の幅はあくまで目安です。

実際の金額は荷物の量、移動距離、階数やエレベーターの有無、当日の時間帯で大きく変わります。

同じ日でも、午前中の便と時間指定なしの便では条件が違います。

相場は「自分の見積もりが極端に外れていないか」を確かめるものさしとして使い、最終的な判断は自分が受け取った見積書の数字で行ってください。

9月の中でも安い日と高い日がある

9月全体が一律に高いわけではありません。

月の中でも需要には濃淡があります。

混みやすいのは、月末に向かう時期と連休の前後です。

着任日を月初に設定されると、その直前の週末に引っ越しが集中します。

加えて9月後半は連休が入るため、その前後は業者側の稼働が読みにくくなり、料金が下がりにくい傾向があります。

逆に比較的動かしやすいのが、9月前半の平日です。

転勤組の集中が本格化する前で、個人の引っ越しも少ない時期にあたります。

平日に休みを取れる人であれば、ここを第一候補に置くだけで条件が変わる可能性があります。

この日程の判断がいくらの話なのかは、先ほどの相場の幅で見当がつきます。

混み合う枠で繁忙期寄りの6万円台になるところを、空いている枠で通常期寄りの4万円台に寄せられたとすれば、動いている金額は2万円前後です。

同じ荷物を同じ距離だけ運ぶのに、いつ運ぶかだけでこの幅が生まれます。

有給を半日使ってでも平日に寄せる価値があるかどうかは、この2万円前後という数字を自分の時給と並べて考えると判断しやすくなります。

日程を組むときのコツは、1日だけを指定しないことです。

たとえば「9月8日か9日か10日のどれかで、午前でも午後でもかまいません」という形で幅を持たせると、業者側は自社のトラックの空きに合わせやすくなります。

相手が組みやすい条件を出すことが、結果的に自分の条件を良くします。

日程の自由度をどれくらい持てるかは人によって違います。

今の自分の状況で、引っ越しにまつわる費用のどこに動かせる余地があるのかを整理したい方は、1分でできる引っ越し費用のムダ度診断で確認してみてください。

見積もりは8月のうちに動き出す

9月に引っ越すと決めているなら、見積もりの依頼は8月のうちに始めるのが現実的です。

理由は2つあります。

1つ目は、候補日が埋まる前に押さえられることです。

転勤の引っ越しは会社側の手配で早めに動くことが多く、こちらが動き出したときには希望の枠が残っていないという事態が起こります。

2つ目は、比べる時間が確保できることです。

引っ越し費用は同じ荷物量でも業者によって提示額が変わります。

時間に追われて1社だけで決めると、その金額が高いのか安いのかを判断する材料がないまま契約することになります。

相見積もりを取るときは、次の点をそろえてください。

  1. 荷物の量を先に確定させる。処分するものは見積もり前に決めておく
  2. すべての業者に同じ条件を伝える。日程の幅、時間帯、階数、エレベーターの有無まで同じにする
  3. 見積書は総額だけでなく内訳で比べる。段ボールの無料提供、梱包資材、エアコンの取り外しや取り付け、不用品の処分がどこまで含まれるかを確認する
  4. 追加料金が発生する条件を聞いておく。当日に荷物が増えた場合、駐車位置が遠い場合などの扱いを確かめる

内訳の確認は特に大切です。

総額が安く見えても、エアコンの工事が別料金だったり、段ボールを自分で用意する前提だったりすると、最終的な支払いは変わります。

同じ土俵に並べてはじめて比較になります。

なお、荷物を減らすことは費用に直結します。

使っていない家具をひとつ手放すだけでトラックのサイズが変わり、料金の区分が変わることもあります。

見積もりの前に手放すものを決めておくと、その分を最初の提示額に反映してもらえます。

引っ越し費用だけ下げても総額では損をすることがある

最後に、いちばん見落とされやすい点にふれておきます。

引っ越しは当日の業者費用だけの話ではありません。

新しい部屋を借りるときには、敷金や礼金、仲介手数料、前家賃といった初期費用が重なり、家賃の数か月分になるのが一般的です。

さらに入居後は、家賃と共益費が毎月かかり続けます。

ここに保証料や火災保険、光熱費、通信費が乗ってきます。

たとえば引っ越し業者の費用を2万円安くできたとします。

これは確かな成果です。

ところが新居の家賃が今より3,000円高ければ、3,000円×12か月で年間3万6,000円の増加です。

2年住めば7万2,000円になります。

当日の2万円は、この差にすぐ飲み込まれてしまいます。

だからといって家賃の安さだけで選ぶという話ではありません。

通勤時間が延びて交通費や生活の負担が増えるなら、それも見えないコストです。

判断するときは、次の3つを1枚の紙に並べてみてください。

  • 引っ越し当日にかかる業者費用
  • 契約時に一度だけかかる初期費用
  • 入居後に毎月かかる家賃・共益費と、光熱費や通信費などの固定費

この3つを、住む予定の年数で総額に直します。

2年住む予定なら、毎月の差額に24をかけた金額が判断の中心になります。

1回きりの費用と毎月続く費用では重みが違うということが、数字にすると一目で分かります。

そのうえで、契約に関わる部分は必ず書面で確認してください。

初期費用の内訳、更新時にかかる費用、退去時の原状回復の考え方は、賃貸借契約書に記載があります。

不明な点は思い込みで進めず、管理会社や不動産会社に確認するのが確実です。

金額の条件について相談したい場合も、自分だけで判断せず、契約前の段階で担当者に聞いておくと後の行き違いを防げます。

9月の引っ越しは、動く人が多い時期です。

だからこそ、日程に幅を持たせ、早めに見積もりを取り、当日の費用と毎月の費用を並べて考えるという基本が、そのまま差になります。

時期の性質を知って先に動くことが、手間のわりに効きやすいコスト対策になります。