賃貸の火災保険で、金額を自分で決められるのはどこか
賃貸の火災保険は、入居の手続きの中で案内されるまま加入することがほとんどです。
契約書にサインした時点では引っ越しの準備で頭がいっぱいで、補償の中身まで見ていなかったという人は珍しくありません。
そして2年後の更新の案内が届いたときも、同じ内容のまま更新してしまいます。
この記事では、その中でも判断に迷いやすい「補償額をいくらに設定するか」に絞って整理します。
読み終わるころには、自分の契約書のどこを見ればいいか、家財はいくらにしておけば無理がないかがはっきりします。
まず前提として、賃貸の火災保険はひとつの商品に見えて、中身は3つの補償の組み合わせでできています。
- 家財の補償。自分の家具・家電・衣類などが火事や水濡れなどで損害を受けたときに備えるもの
- 借家人賠償責任。自分が原因で部屋を壊してしまったときに、大家さんへの賠償に備えるもの
- 個人賠償責任。階下への水漏れなど、他人に損害を与えてしまったときに備えるもの
このうち、自分の判断で大きく動かせるのは1の家財です。
2は物件側から金額を指定されることがあり、3は他の保険と重複しやすい性質があります。
つまり「補償額をいくらにするか」で悩むべき中心は家財で、残りの2つは確認作業に近いと考えると整理しやすくなります。
家財の補償額は、買い直したらいくらかで考える
家財の補償額の考え方はシンプルです。
今の部屋にあるものを全部失ったとして、生活を元に戻すために買い直したらいくらかかるか。
その金額が出発点になります。
一人暮らしで持ち物が多くない場合、100万円から300万円程度が目安として案内されることが多いです。
賃貸の単身世帯では300万円前後で設定されているケースが一般的だという解説もよく見かけます。
ただしこれはあくまで平均的な想定で、あなたに合っているかどうかは別の話です。
一度、ざっくりで構わないので書き出してみてください。
- 冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器などの生活家電
- テレビ、パソコン、タブレット、周辺機器
- ベッド、机、椅子、収納家具、カーテン、照明
- 衣類、靴、バッグ、寝具
- 自転車、調理器具、食器、本
家電と家具だけで30万円から50万円、衣類や日用品を足して70万円から100万円というのが、持ち物が少なめの単身世帯でよくある水準です。
趣味の道具やパソコン周りにお金をかけている人は、そこだけで数十万円動きます。
ここで気をつけたいのが、補償額は多ければ安心という単純な話ではないことです。
損害保険は、実際に受けた損害を埋めるための仕組みです。
持ち物の総額が100万円の人が家財500万円で契約していても、500万円が受け取れるわけではありません。
保険料だけが上乗せされている状態になっている可能性があります。
逆に、持ち物が増えているのに契約時の金額のままという場合もあります。
学生のときに入った契約を、社会人になって家電を買い替えた後もそのままにしている、というパターンです。
どちらも一度計算してみないと気づけません。
自分の固定費全体の中で保険がどのくらいの位置にあるか気になった方は、1分でできる保険かけすぎ度診断で現状を整理してみてください。
借家人賠償責任は、まず契約書を見るところから
借家人賠償責任は、自分の不注意で部屋を損傷させてしまい、大家さんに対して原状回復の責任を負ったときのための補償です。
賃貸で暮らす以上、部屋は借り物なので、この補償が求められるケースがほとんどです。
金額の目安としては、延床面積が50平方メートル未満なら1,000万円程度、50平方メートル以上なら2,000万円程度で検討するという説明がよく使われています。
ワンルームや1LDKの一人暮らしなら、多くが前者にあたります。
ただしこの補償は、家財のように自分の感覚で決めていいものではありません。
物件によっては、入居の条件として借家人賠償責任の金額が指定されていることがあります。
管理会社や大家さんの側からすると、部屋を守るための最低ラインなので、そこを勝手に下げられると困るからです。
やることは2つです。
- 賃貸借契約書と、入居時に渡された保険の証券を出してくる
- 借家人賠償責任の金額に関する記載を探す
契約書に金額の指定が書かれていれば、それが下限になります。
記載が見当たらない、あるいは書いてあるが読み取れないときは、管理会社に問い合わせて教えてもらってください。
ここを自己判断で下げてしまうと、契約違反になる可能性があります。
金額を触る前に確認する、という順番を守ってください。
なお、賃貸の火災保険は管理会社に案内されたものにしか入れないと思っている人がいますが、必要な補償を満たしていれば自分で選べるケースもあります。
これも物件ごとに条件が違うので、切り替えを考えるなら契約書の確認と管理会社への相談が先です。
個人賠償責任は、重複していないか確認する
3つ目の個人賠償責任は、他人にケガをさせてしまったり、他人のものを壊してしまったときに備える補償です。
賃貸で現実的にいちばん多いのは、洗濯機のホースが外れた、浴槽の水を止め忘れたといった原因で階下の部屋に水漏れを起こしてしまうケースです。
水漏れを一度起こすと、責任の行き先が3方向に分かれます。
下の階の住人の家具や家電への弁償が個人賠償責任、自分の部屋の床や壁を傷めた分の原状回復が借家人賠償責任、そして自分の持ち物が濡れた分が家財の補償です。
3つの補償がそれぞれ別の役割で置かれているのは、こうして責任の相手が変わるからです。
どれか1つの金額だけを見ても足りているか判断できないのは、この構造が理由です。
この補償は、賃貸の火災保険に組み込まれていることが多い一方で、意外なところにも付いています。
- 自動車保険の特約
- クレジットカードに付帯する保険
- 自転車保険
- 家族が加入している保険の家族特約
個人賠償責任は、複数の契約に入っていても損害の総額を超えて受け取れるわけではありません。
つまり重複していると、その分の保険料が二重に出ていく形になります。
加入している他の保険の証券や、カード会社の会員ページを一度見てみてください。
とはいえ、外す判断は慎重にしてください。
他の契約に付いていると思っていたら対象範囲が違った、家族の契約は同居が条件だった、という食い違いはよくあります。
重複していそうだと気づいたら、そのまま解約するのではなく、どちらの契約が自分の状況をカバーしているかを保険会社に確認したうえで決めるのが安全です。
保険料の相場感と、金額を見直すタイミング
賃貸向けの火災保険の保険料は、年4,000円から6,000円程度が一つの目安として紹介されることが多いです。
補償の組み合わせや保険会社によって幅があり、条件によっては年1万円を超えることもあります。
2年契約なら1万円前後、というのが多くの人の実感に近い水準です。
金額としては大きくありませんが、固定費という点では家賃や通信費と同じ性質を持っています。
一度決めた設定が、何もしなければそのまま何年も続いていくからです。
見直しのタイミングは、次の3つです。
- 保険の更新の案内が届いたとき
- 引っ越しをするとき
- 大きな家電や家具を買い替えたとき
とくに1つ目は、こちらから動かなくても向こうから連絡が来る唯一の機会です。
案内が届いたら、証券に書かれている家財の金額と、この記事で書き出した持ち物の合計額を並べてみてください。
差が大きいようなら、変更できるかどうかを保険会社か代理店に聞く価値があります。
たとえば家財を500万円から300万円に下げて保険料が年2,000円下がったとすると、2年契約で4,000円、10年住み続ければ2万円の差になります。
金額の大小より、一度直せば効き続けるという性質のほうが大切です。
ただし補償を削ると、その分だけ受け取れる金額の上限も下がります。
持ち物の実態から離れた設定にしないという線だけは守ってください。
補償額を決めるときの手順まとめ
最後に、今日やることを順番に並べます。
- 賃貸借契約書と保険証券を出して、家財・借家人賠償・個人賠償のそれぞれの金額を書き出す
- 家具・家電・衣類を買い直したらいくらかを概算し、家財の金額と比べる
- 借家人賠償の金額について、契約書に指定の記載がないか確認する。読み取れなければ管理会社に聞く
- 個人賠償が自動車保険やクレジットカード、家族の契約と重複していないか確認する
- 差があった項目について、更新のタイミングで保険会社か代理店に変更できるか相談する
火災保険は、加入するときに一度だけ考えて、あとは意識から消えてしまいがちな契約です。
金額の当てはめ方さえ分かっていれば、確認そのものは30分ほどで終わります。
契約や補償の内容で判断に迷う部分が出てきたら、契約書の内容を管理会社に、保険の中身を保険会社や保険の専門家に確認して進めてください。