更新料の相場は家賃1か月分。まず全体像をつかむ
賃貸の更新のお知らせが届いて、更新料の金額を見て手が止まった経験はないでしょうか。毎月の家賃と違って、更新料は2年に1度しか出てこない費用です。だから相場が分かりにくく、「これは妥当なのか」を判断しにくい費用でもあります。
この記事では、更新料の相場と地域による慣習の違い、支払い義務の考え方、そして更新のタイミングで同時にかかる費用の合計を整理します。読み終えたときに、自分の更新にいくらかかるのかを自分で計算できる状態になることを目指しています。
まず金額の目安です。更新料の相場は家賃1〜2か月分が一般的とされています。多くの賃貸借契約は2年ごとの更新なので、家賃8万円の部屋で更新料が1か月分なら、2年に1度8万円を払う計算になります。
この8万円を月あたりに直すと、80,000円÷24か月で約3,333円です。つまり実質的には、毎月の家賃に3,000円強が上乗せされているのと同じことになります。更新料を「たまに来る臨時の出費」と考えると痛みが大きく感じられますが、月あたりに割り戻すと、自分の家賃が本当はいくらなのかが見えてきます。
更新料の慣習は地域でここまで違う
更新料でいちばん誤解されやすいのが、全国どこでも同じようにかかると思われている点です。実際には地域差がかなり大きく、慣習として更新料がほとんど存在しない地域もあります。
たとえば関西では、大阪府や兵庫県、奈良県、和歌山県は更新料を取らない物件の割合が非常に高く、大半を占めるといわれています。一方で同じ関西でも京都府は事情が違い、1年ごとに家賃1か月分、あるいは2年ごとに家賃2か月分といった更新料が設定されている物件があります。府県をまたぐだけで前提が変わるということです。
首都圏や周辺でも一律ではありません。埼玉県や愛知県では、更新料が家賃の半月分という契約も少なくないとされています。同じ「更新料あり」でも、1か月分なのか半月分なのかで、2年間の総額は倍近く変わります。
ここで押さえておきたいのは、地域の慣習は相場を判断する材料にはなっても、自分の契約を決めるものではないということです。住んでいる地域で更新料が一般的だとしても、契約書に定めがなければ請求の根拠はありません。逆に更新料のない地域が多いエリアでも、契約書に書いてあればその契約に従うことになります。
引っ越し先を検討しているなら、この地域差は総額の比較に効いてきます。家賃が同じ2つの部屋でも、片方に更新料が家賃1か月分あり、もう片方にないなら、4年住んだときの差は家賃2か月分です。家賃8万円なら16万円の差になります。物件を比べるときは、家賃だけでなく更新条件まで並べて見てください。
更新料は法律で決まっていない。よりどころは契約書
更新料について、法律で全国一律に「払わなければならない」と定められているわけではありません。支払い義務があるかどうかは、賃貸借契約書にその定めがあるかどうかで決まります。だからこそ、金額に納得がいかないときに最初に見るべきなのは、相場のページではなく手元の契約書です。
契約書で確認したいのは次の3点です。
第一に、更新料の有無と金額の書き方です。「家賃の1か月分」と書かれているのか、具体的な金額が書かれているのかで、家賃が改定されたときの更新料も変わってきます。第二に、更新の周期です。2年ごとが多いものの、1年ごとの契約もあります。第三に、更新事務手数料など更新料とは別の名目の費用が定められていないかどうかです。
もう1つ見ておきたいのが、家賃の改定に関する条項です。近年は更新のタイミングで家賃の見直しを打診されるケースが増えており、更新料と値上げの話が同時に来ることがあります。2026年は東京23区を中心に家賃相場の上昇が続いており、更新時の値上げ幅は従前家賃の3〜5%程度が目安とされています。実額では月1,000〜3,000円程度の増額が多いという解説もあります。
家賃8万円で3%上がると、月2,400円、年間で28,800円、2年で57,600円です。この負担は更新料と違って、その後ずっと続きます。更新料の金額よりも、実は家賃改定のほうが長い目では効いてくるということです。
契約内容の解釈で疑問が残るときは、自己判断で結論を出さず、管理会社や貸主に確認してください。契約や法律の解釈に踏み込んだ判断が必要な場面では、消費生活センターや弁護士など専門家への相談が適切です。
更新時にかかるのは更新料だけではない。合計で見る
更新のタイミングでは、更新料以外の費用が同時に来ることがよくあります。ここを分けて考えていると、届いた請求書の金額に驚くことになります。
同じ時期に重なりやすいのは次の費用です。
1つ目は更新事務手数料です。契約の更新手続きにかかる費用として、更新料とは別に設定されている場合があります。2つ目は家賃保証会社の更新保証料です。年1回1万円程度という設定が一般的とされ、月額型のプランでは毎月の支払いに含まれる代わりに年1回の更新保証料が不要になるケースが多いようです。3つ目は火災保険です。賃貸の火災保険は2年契約が多く、賃貸借契約の更新と同じ時期に更新が来ることがあります。
家賃8万円の部屋で、更新料が家賃1か月分、更新事務手数料が1万円、保証会社の更新保証料が1万円、火災保険の更新が2年で15,000円だとすると、合計は115,000円です。家賃8万円の人にとっては、月の手取りに近い金額が一度に出ていくことになります。
これを月あたりに直すと、115,000円÷24か月で約4,790円です。つまりこの部屋の実質的な負担は、表示家賃8万円ではなく月85,000円弱ということになります。部屋を比べるときも、更新までを含めた総額で見ると判断が変わることがあります。
自分の家賃が相場から見て割高になっていないかが気になったら、1分でできる家賃払いすぎ度診断で現状を整理してみてください。更新のタイミングは、家賃そのものを点検する数少ない機会でもあります。
更新料と引っ越し費用を並べて損益分岐点で考える
更新料の金額を見て「これなら引っ越したほうがいいのでは」と考える人は多いはずです。ここは感覚ではなく、数字を並べて比べるのが確実です。
比べるのは次の2つです。
更新して住み続けた場合の費用は、更新にかかる合計額と、家賃が改定される場合はその差額の合計です。先ほどの例なら更新関連で115,000円、これに家賃が月2,400円上がるなら2年で57,600円が加わり、合計172,600円になります。
引っ越した場合の費用は、初期費用と引っ越し業者への支払いです。初期費用は家賃の4〜5か月分が目安とされることが多く、家賃8万円なら32〜40万円程度です。ここに引っ越し業者の費用が乗ります。
この時点では更新して残るほうが安く見えます。ただし、引っ越し先の家賃が下がるなら話は変わります。家賃が月8,000円下がる部屋に移れたとすると、年間で96,000円、4年住めば384,000円です。初期費用を吸収できる可能性が出てきます。
つまり判断の分かれ目は、更新料の金額そのものではなく、家賃差と住む予定の年数です。同じエリアで相場が上がっていて、今より安い部屋が見つかりにくい状況なら、更新して住み続けるほうが総額を抑えられるケースが多くなります。逆に、今の家賃が相場より高い状態のまま更新を重ねているなら、住み替えで差が出る余地があります。
なお、更新料の負担が重いという理由だけで急いで動くと、初期費用のほうが大きくなることがあります。数字を並べてから決めてください。
更新の通知が来たときの進め方
最後に、実際に更新のお知らせが届いたときの手順を整理します。
第一に、届いた書面の内訳を項目ごとに確認します。更新料、更新事務手数料、保証料、火災保険が別々に書かれているのか、合算されているのかを見ます。合算されていて内訳が分からない場合は、管理会社に内訳を尋ねて問題ありません。
第二に、契約書と照らし合わせます。書面に書かれた金額や名目が、契約書の定めと一致しているかを確認します。ここで食い違いがあれば、まず管理会社に確認するのが先です。
第三に、周辺の相場を調べます。同じエリア、同じ間取り、似た築年数の物件がいくらで募集されているかを見ると、自分の家賃の位置が分かります。相場より高い状態が続いているなら、更新のタイミングは条件を相談する数少ない機会になります。
第四に、家賃の改定が含まれている場合は、上がる金額を年額と契約期間で計算します。月2,000円の値上げでも、年24,000円、4年で96,000円です。金額を可視化してから判断してください。
第五に、疑問が残るまま署名しないことです。更新の書面は次の2年間の条件を決めるものです。急いで返送を求められても、内容を確認する時間は取ってかまいません。
更新は、ただ書類を返すだけの作業になりがちです。ですが、家賃・保証料・火災保険という固定費が一度にテーブルに乗る、年に一度あるかないかのタイミングでもあります。せっかくなので、金額をひととおり並べて確認してみてください。1回見直せば、その効果は次の更新まで続きます。


